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介護日記(222) 〜「ありがとう」の3つの意味〜

青空の下に咲き始めたコスモスの花がやさしさを教えてくれる。

講演終了後、一人の女性が駆け寄って手を握る。「私は悪い母です」と言い、後は涙で話せない。我が子をその胎内に10月10日(とつきとうか)抱き、育むことの尊さ。命がけで産み落とす出産。彼女を抱しめながら、臨終の場面で父が教えた「ありがとう」の言葉の意味を想う。

「『ありがとう』には3つの意味がある。1つ目に、自分がこの世に存在することを許し、産んでくれた両親にありがとう。2つ目に、自分の身体にありがとう。そして3つ目、目の前の私を認めてくれる、あなたにありがとう。このありがとうの3つの意味をいつも忘れないようにしなさい」

臨終に臨んで私の手を握り、「ありがとう」と笑顔で父が教えた。

命がけで産み落とすことの尊さ、新しい命の誕生は何にも代えがたい事。

10月10日の長き日々の喜びと辛さ。泣き続ける彼女を抱きながら、背中をさすり続ける。涙が彼女の心を洗う。

そう言えば以前、胎内体験内観研修で出会った16歳の女性を思い出す。

「柴田さん、私は生まれて3日で施設に捨てられました。こんな私が産みの母のことが思いだせるのですか? 私は母を恨んでいます」

研修前に腹立たしそうに私に尋ねた彼女は、研修が進むにつれて16年分の涙を流した。思わず抱きしめて共に泣く。母の胎内にいた長い時間の慈愛を体験する。母はどんな想いで、命がけで産んだ我が子を施設の前に置いたのか? 母の切なさ、辛さを彼女は理解し、そして許して涙した。

神仏ではない私達は、時として過ちを犯す。自らが不完全であることに気付いた時、初めて人は人を許せるのだろう。

ありがとうの3つの意味、この世に存在する事の尊さを教えた父に感謝 合掌

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