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介護日記(229) 〜やさしい春雨に祈る〜

やさしい春の雨が降る。

春休みになった高校生の皆様が、なごみの里にボランティアに来て下さる。

ふとその雨を見つめながら、自由に動くことのできない、幸齢者様を思う。娘さんが在宅介護をされていたのだが、体調を崩し、お母さんを施設へと預けられる。

そんな中、辛いメールを頂く。

「母の部屋のトイレ介助を男性がしておられた。下半身裸で便器に座っている母。その前でしゃがんでパットを換えようとしている60代ぐらいの男性。夕方に母の様子を見に訪ねて、たまたまその光景を目の当たりにし、もう驚愕したと同時に、惨めというか涙が出そうでした。

母は高齢ですが女性です。これは、尊厳には当たらないことですか。真面目に一生懸命に生き、終末がこれでは悲しいです」

やり場のない怒りと悲しみをつづられ、無償ボランティア“エンゼル活動”の派遣をお願いされる。施設へエンゼルさんが訪ねると、乾いたお部屋に一人でいらっしゃる。

「中にいると季節がさっぱりわからん。誰でも良いから、一日一回でも外に連れてってくれればわかるけどね。ここにいると呆けそうで、時間も何も分からなくて……あなたが来てくれて心が飛び跳ねるほど嬉しいです」

そう手を握り笑顔で話された。

その後、デイサービスが終日に変わり、施設での暮らしも落ち着かれた。娘さんは、こう言う。

「身体は楽になったけれど、実は何も変わらない。施設に入れてしまったという罪悪感。心はもっと重くなったみたいです」

介護が大変なのではなく、命を預かる重み。これは、多くの人が体験している。今、施設には80万人を越える幸齢者の方々が暮らす。たくさんの人の中の孤独。声も出せず、叫ぶことも逃げることもできず、悲しみを解き放つ方法がない。

私の夢は、“全ての人が最期、愛されていると感じて旅立てる社会創り”。今日も高校生の皆さんと一緒にこの夢に向かって進んでいく。春のやさしい雨が、たくさんの皆様のやさしさに変わることを祈りながら。

尊厳を守る事の大切さを命がけで教えて下さった幸齢者様に感謝合掌

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