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看取り士日記 (248)  〜永遠の命を〜

庭の紫式部の実が深みを増して美しい季節。

看取り士会に一本の電話が入る。46歳男性、お母様の良子さん(仮名)83歳の看取りのご依頼。

要介護5、認知症で息子さんのこともわからない。目はほとんど見えていない。9月初旬、軽い脳梗塞を起こし、左半身が動かない。食事が減り、眠りがちな時が増えたのでお迎えが近いと思うとご連絡を頂いた。

10月初旬、自宅に伺う。

デイサービス後のお疲れを感じさせない程にお元気だった。息子さんは終始お母様の頭をなでながらお話をされる。「良子ちゃん」と呼ばれるその声がけで、すでに看取りがはじまっていることを感じる。人は旅立ち前に看取る者の胎内に戻る。親子が逆転する時間。

「シングルベットをセミダブルのベッドに変えようと思います。添い寝をしたいので」と事もなげに話される。

そして、20日の朝「母の呼吸が乱れています。どうすれば良いのでしょう」とご連絡を頂き、近くの看取り士に連絡を取る。そして、抱きしめて、呼吸を合わせて頂く。良子さんの呼吸が穏やかになって4、5分後、息子さんの腕の中で、良子さんは旅立っていかれた。

最期の息のその時、嫁いだ娘さんからの電話が入った。良子さんの旅立ちは、手を握るお父様、抱きしめる息子さん、そして電話でつながる娘さんと家族がひとつになった瞬間だった。

旅立たれた当日だけが、デイサービスのお休みと息子さんのお休みが重なった日だったと言う。認知症で辛い想いをなさった良子さんの最期の舞台。それは良子さんご自身のプロデュースと教えられる。

その後、娘さんが遠方より駆けつけられたのが5時間後だった。息子さんが添い寝し、お父様が良子さんの好きなワルツを流している中に到着。長い時間が過ぎてなお、温もりのある背中とお腹が殊更に熱くなる。娘さんもまた、良子さんを抱きしめ、穏やかなお別れの時間を過ごす。旅立ちの翌日の夜、息子さんからこんな電話が入った。

「添い寝をして良いでしょうか?」「もちろんです。しっかりと魂を重ねてください」

この穏やかさと丁寧な時間、自宅だからこそできる事。暮らしの中で穏やかに旅立つ事の尊さを教えてくれた良子さんに感謝 合掌

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